インドネシアにおけるバイオ燃料使用の義務化

インドネシアにおけるバイオ燃料使用の義務化

2015年12月、フランスのパリで開催された第21回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP21)で、2020年以降の温室効果ガス排出削減等のための新たな国際的なフレームワークであるパリ協定が採択されました。1997年に採択された京都議定書とは異なり、パリ協定は多くの発展途上国も参加する全世界的な枠組みです(ただし、2019年11月に米国が離脱を表明しました)。具体的な削減目標は国ごとに異なり、また5年ごとに見直されることになっています。

こうした背景から、各国がそれぞれのやり方で温室効果ガス削減に向けた取り組みを進めています。そのため、近年では日本の法規制や基準の方が発展途上国よりも厳しいとは必ずしも言えないような状況が生じています。そうした事例のひとつとして、インドネシアにおけるバイオ燃料政策について取りあげてみたいと思います。

インドネシアでは、2006年に大統領令第5号として国家エネルギー政策が発表されました。化石燃料への依存度を減らし、同国が多く産出するパーム油を原料とするバイオ燃料へと転換することがバイオ燃料政策を推進する目的のひとつとして挙げられています。また、国家バイオ燃料委員会が設立され、「バイオ燃料開発のロードマップ」が作成されました(表1参照)。

表1:バイオ燃料のロードマップ

2005~2010年 2011~2015年 2016~2025年
バイオディーゼル ディーゼル燃料の10%にバイオディーゼルを混合し(B10)、241万kLを消費 ディーゼル燃料の15%にバイオディーゼルを混合し(B15)、452万kLを消費 ディーゼル燃料の20%にバイオディーゼルを混合し(B20)、1,022万kLを消費
バイオエタノール ガソリンの5%にバイオエタノールを混合し(E5)、148万kLを消費 ガソリンの10%にバイオエタノールを混合し(E10)、278万kLを消費 ガソリンの15%にバイオエタノールを混合し(E15)、628万kLを消費

その後、エネルギー鉱物資源省令(2008年第32号)によって2025年までのバイオディーゼルとバイオエタノールの導入目標(目標混合率)が各部門ごとに設定されました。この目標は数回改定され、直近では2015年3月にエネルギー鉱物資源省令(2015年第12号)によって改定されています(表2および表3参照)。

表2:部門ごとのバイオディーゼルの導入目標(目標混合率)

部門名 2015年4月 2016年1月 2020年1月 2025年1月 備考
家庭 未規制
零細企業、漁業、農業、交通(公共) 15% 20% 30% 30% 全消費量中の割合
交通(民間) 15% 20% 30% 30% 全消費量中の割合
製造業・小売業 15% 20% 30% 30% 全消費量中の割合
電力 25% 30% 30% 30% 全消費量中の割合

表3:部門ごとのバイオエタノールの導入目標(目標混合率)

部門名 2015年4月 2016年1月 2020年1月 2025年1月 備考
家庭 未規制
零細企業、漁業、農業、交通(公共) 1% 2% 5% 20% 全消費量中の割合
交通(民間) 2% 5% 10% 20% 全消費量中の割合
製造業・小売業 2% 5% 10% 20% 全消費量中の割合
電力 全消費量中の割合

これらは単に導入目標(目標混合率)というだけではなく、法的拘束力を持ったものです。そのため、多くの企業は使用するディーゼル燃料(軽油)やガソリンのうちの一部をバイオディーゼルやバイオエタノールに置き換えなくてはなりません。現在すでに「2020年1月」の欄に表示されている割合以上の燃料をバイオ燃料に置き換える必要があります。

前述した通り、この目標はこれまでに何度か改定されており、その度に目標が前倒しされて(より高い目標値が設定されて)きました。今後の導入目標(目標混合率)の改定の動向に注視する必要があります。

今回紹介したインドネシアにおけるバイオ燃料使用の義務化と同様に、他の発展途上国でも日本の法規制や基準のアプローチとは異なる法規制や取り組みがおこなわれる可能性は十分にあります。海外に拠点を持つ日本企業の皆様には、ぜひそうした可能性を視野に入れ、現地での法改正や環境規制の動向をウォッチできる体制の確立を強くお奨めいたします。弊社のサービスでサポートすることも可能です。ご興味がありましたらこちらからお問い合わせください。