ISO 14053:2021 が発行されました

ISO 14053:2021 が発行されました

2021年2月、中小企業を含む組織が環境管理会計手法のひとつであるマテリアルフローコスト会計(Material Flow Cost Accounting: MFCA)を段階的に実施するための実践的なガイドラインである ISO 14053:2021 が発行されました。名称は「Environmental management—Material flow cost accounting—Guidance for phased implementation in organizations」で、日本語に訳せば「環境マネジメント—マテリアルフローコスト会計—組織における段階的実施のためのガイダンス」となるでしょうか。

MFCA とは

マテリアルフローコスト会計(MFCA)とは、ごく簡単に説明すると「モノ(Material)をつくっていく過程(Flow)の中でかかってくるお金(Cost)を、ドンブリ勘定ではなく、ちゃんとワリカンでお会計(Accounting)しましょう」ということです(古川ほか 2014, 4)。

製造工程に投入する原材料は、残念ながら、そのすべてが完成品になるわけではありません。私たちは、普段の思考の中では、完成品についてはそれを「つくっている」と明確に意識しますが、途中で完成品とは分離されてしまうものについてはあまり「つくっている」という感覚が持てません。しかし、MFCAの考え方では、例えばリンゴの皮をむいているとき、私たちは食べられる実の部分と(普通は食べない)皮の部分の両方を同時に「つくっている」と考えます。このように、完成品にはならないもの(=ムダ)にも完成品と同じように時間やお金や労力をかけているということを意識することがMFCAの思想の根幹にあります。

ムダの部分に時間やお金や労力をかけているという意識を持つことは、ムダを減らしていくためのモチベーションにつながります。そしてムダを減らすことは、資源生産性(=ある決められた量の資源からどのくらい多くの価値を生み出せているかを示す指標)とエネルギー効率の両方の向上につながり、環境にもお財布にもやさしい状態への改善につながっていきます。このように、MFCA は持続可能な成長を実現するための新たな経済モデルとして提唱された「循環型経済(サーキュラーエコノミー)」とも多くの共通点を持っています。

ISO 14051:2011、ISO 14052:2017、そして ISO14053:2021

MFCA に関する国際規格としては、2020年までに ISO 14051:2011 と ISO 14052:2017 が発行されています。

ISO 14051:2011 は MFCA の手法について規定しています。これが MFCA のメインの国際規格です。

ISO 14052:2017 は、MFCA をひとつの組織だけでなく、上流(原材料の調達元、サプライヤーなど)や下流(配送、販売、消費者など)を含めたサプライチェーン(バリューチェーンとも呼ばれます)で展開するときのガイダンスです。

そして今回発行された ISO 14053:2021 は、より小規模な組織(中小企業など)が MFCA を段階的に実施していくためのガイダンスとなっています。中小企業は大企業に比べると、さまざまなリソースが不足している傾向があります。これまでにも、「MFCA を導入したくてもいきなりは難しい」という声が多くあげられていました。ISO 14053:2021 はそうした声に応え、段階的アプローチ(phased approach)を示しています。このアプローチによって、組織がそれぞれの状況に応じて MFCA 活動を独自のペースで展開しやすくなります。