新型コロナウイルス感染症の企業における出口戦略:適切な業務再開のために

新型コロナウイルス感染症の企業における出口戦略:適切な業務再開のために

このブログ記事は、弊社がInogen Alliance*を通じ提携している米国Anteaグループによる記事(リンク)を参考にしております。元記事は2020年4月27日に発表されたものであり、最新の情報とは異なっている可能性がありますのでご注意ください。日本の読者のために、2020年5月15日時点での日本向けの関連情報も囲みで追記しております。

新型コロナウイルス感染症対策から通常業務への復帰を考えるとき、企業は次のような難しい問題や疑問に次々と直面します。

  • 従業員はいつオフィスに復帰すべきか
  • どのような予防策を講じる必要があるか
  • どのような個人用保護具を準備する必要があるか
  • どのようにして顧客に安心していただくか

分かっていることは、新型コロナウイルス感染症からの復旧にはある程度の時間がかかるだろうということと、慎重かつ安全第一の再開方法が公衆衛生のために重要になるということです。どのような状況にも対応できる万能薬のような対策はありませんが、ここでは従業員や顧客がオフィスや実店舗に戻ってくる前の考慮事項について、いくつかの海外での取組事例をご紹介したいと思います。

 

1. 計画を立てる

事業再開の前に、よく練られた計画を立て、市区町村、都道府県、国の規制を遵守しているかどうかを確認することが重要です。

最初のステップは、自分の地域や業種に適用される新規の命令について、地方自治体に確認することになります。そうした新規の命令や条件が再開のタイミングにどのように影響するかを把握する必要があります。命令の内容によっては、営業時間や業務のレベルを変更する必要が出てくるかもしれません。感染症対策のための計画を立てましょう。米国の事例としては、OSHAのGuidance on Preparing Workplaces for COVID-19を参考にしてください。

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2. ビル管理・空調管理:新型コロナウイルス以外にも注意を向ける

業務再開前に、空調設備を点検する必要があります。しばらく何もせずに放置された建物には、配管に水が溜まっていたり、空気の質や温度が維持管理されていなかったりなど、様々なリスクが潜んでいます。配管中に取り残された水によって、水を媒介とするレジオネラ菌などの病原体が繁殖し、新型コロナウイルス感染症と同様の症状を引き起こす可能性があります。

無人になった建物内でも、温度や環境は変化します。湿度が調整されていない場合には、カビの発生や細菌の繁殖につながる恐れがあります。これらの状況を事前に調査・判断しないと、従業員や一般の人の健康に害を及ぼしてしまう可能性、より多くの経済的負担をもたらしてしまう可能性、不衛生な建物や企業であるという悪いイメージを抱かれてしまう可能性さえあります。

The Building Owners and Management Association(BOMA)は、建物供用再開時の考慮事項に関するガイダンスであるGetting Back to Work: Preparing Buildings for Re-Entry Amid COVID-19を提供しています。米国環境保護庁(EPA)は、新型コロナウイルス感染症対策の支援を目的として、建物やビル管理の専門家向けの空調管理ガイダンスを発表しています。

日本向けの関連情報

日本では、建築物衛生法に基づき、特定建築物の空気環境の測定(2か月以内ごとに1回)や貯水槽の清掃(1年以内ごとに1回)が義務づけられています。これは新型コロナウイルス感染症が発生している段階においても遵守する必要があると厚生労働省のウェブサイトに明記されています。地域により、新型コロナウイルス感染症の集団感染が発生し、当該特定建築物が利用されない状況になるなど、やむを得ない事由により、空気環境測定を定期に実施することが困難になった場合には、実施できない理由を帳簿に記録するとともに、実施が可能となった場合には、速やかに空気環境測定等を実施するなどの対応が考えられるため、最寄りの保健所に相談することとされています。 また、空気調和・衛生工学会は「新型コロナウイルス感染対策としての空調設備を中心とした設備の運用について」を公開しています。

 

3. 仕事場の消毒および清掃

仕事場の状況は、職場が閉鎖されていた期間や営業レベルによってさまざまです。新型コロナウイルスが職場の表面で感染性をまだ有している場合も、そうでない場合もあります。どちらであっても、業務が中止あるいは制限されていた場合には、適切な清掃作業が必要です。

推奨される消毒剤や洗剤の種類については、EPAのウェブサイトを参照してください。ドアノブや照明スイッチなどのよく使用される表面だけでなく、棚、壁の写真、照明器具本体などの誰かがくしゃみをすれば飛沫がついてしまうような、普段はあまり掃除をしないような表面についても潜在的なリスクを考えることが推奨されます。また、職場に存在する表面や表面の種類について一覧にまとめ、必要な清掃の頻度と洗剤の種類を検討するのもよいでしょう。

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4. 必要な個人用保護具

誰か(従業員、顧客、それ以外の第三者)が仕事場に入る前に、営業再開に向けた準備でどのようなものが必要になるかを検討しましょう。

必要に応じて適切な個人用保護具(PPE)を用意し、適切な洗浄、消毒、および個人用衛生用品を利用できるようにする必要があります。個人用保護具には手袋やマスク等があり、使用方法が適切であること、着用及び管理のためのトレーニングが実施されていること、使用する人にあった形状であることなどを考慮することが重要です。これらの備品が確保できない場合には、営業再開ができる時期が先送りされてしまうことになるため、時間にゆとりを持って計画を作成することが重要になります。医療および公衆衛生の専門家向けに、米国疾病予防管理センター(CDC)はStrategies to Optimize the Supply of PPE and Equipmentを提供しています。

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5. 従業員の健康

CDCは医療機関を受診すべきかどうかを判断する際に役立つCoronavirus Self-Checkerを提供しています。これは新型コロナウイルス感染症やその他の疾患の診断や治療を目的としたものではありません。また、現在米国に居住している人びとのみを対象としています。連邦政府ガイドラインは労働者に対して体温測定を求めることがCDCによって承認されているとしています。しかし、残念ながら、CDCと労働安全衛生局(OSHA)からは、これらの健康調査の実施方法に関する指針は公表されていません。2020年3月17日、米国雇用機会均等委員会(EEOC)はガイダンスを改訂し、現在の新型コロナウイルス感染症のパンデミックに対応して、雇用主が体温スクリーニング措置を実施してもよいと明確に認めました。EEOCは、「CDCおよび州や地方自治体の保健当局は新型コロナウイルス感染症が各地に広がっていることを認め、それに伴う予防措置を講じるよう発令しているため、雇用主が従業員の体温を測定することができる」としています。また、「新型コロナウイルス感染症患者の一部には発熱が見られないことに留意」するよう雇用主に注意喚起しています。

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6. 職場スペースの使用計画

必要に応じて、ソーシャルディスタンス(対人距離)のための十分なスペースを確保するために、共用部や作業スペースを点検する必要があります。すなわち、一部の作業スペースを見直したり、スペースとスペースのあいだに物理的な間仕切りを設置したりします。会議室がある場合には、同時に使用することができる人数を制限する必要があります。こうした新しいルールを実施するためのお知らせを掲示したり、ソーシャルディスタンス確保のために比較的狭いスペースでは適切な人数にあわせていすや設備を外に出したりすることも考えられます。

 

7. コミュニケーション計画

規制当局から提供された要件とガイドラインを組み込み、どのような作業、備品、タイミングが必要かを把握したら、次は従業員と利害関係者(顧客、請負業者、ベンダーなど)に対して、それらの詳細と要望を伝える準備が大切です。再開前にどのような作業を実施するか、どのような備品、保護具、または洗剤が用意できているか、そして再開のタイミングなどについて概要を説明します。また、新しいルールや手順がある場合には、事前に社員に周知しておく必要があります。新しい情報が入ればすぐにリアルタイムで更新されるような「生きた文書」としてコミュニケーションを活用することが有益でしょう(これはおそらく電子的手段による通知になるでしょう)。そうすることにより、新しい平常時を迎えたときに、全員が安心感を得ることができるでしょう。

 

8. 情報リソース

ここまで説明してきたことに加えて、業種や業態に関連した、さらに具体的なガイドラインなどがあります。業種や業態に固有の業界団体、リソース、ガイドラインにアクセスできる場合には、それらを当たって具体的な推奨事項を検討することが望まれます。なぜなら、小売業における事業再開と、製造業における事業再開はまったく異なるものだからです。人どうしの接触の機会も、従業員の数、訪問者の頻度、一般の人びととの対面形式によって異なります。

継続的にチェックすべき役立つ情報リソースとしては次のようなものがあります。

日本向けの関連情報

弊社Propharm Japan では、提携している米国Anteaグループと共に労働安全衛生に係る知識と経験を活かし、新型コロナウイルス感染症を含むパンデミックやその他の緊急事態への備えと対応計画の策定を支援します。
また、世界中のリソースを活用し、目下の困難な時期に、お客様の健康と安全に関するニーズに積極的に対応してまいります。ご質問・ご相談等ございましたら、こちらからお気軽にご連絡ください。

 

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* Inogen Allianceとは?
プロファーム ジャパン株式会社は、環境・サステナビリティコンサルティング企業のグローバルネットワークであるInogen Allianceに加盟する日本代表コンサルティング会社として活動しています。
Inogen Allianceには、世界中に165以上のオフィス、6,400人以上のプロフェショナルスタッフが加盟し、120か国以上で一貫性のある、高品質、費用対効果の高い環境、労働・安全衛生、およびサステナビリティービスを幅広く提供しています。