産業用ロボットと労働安全

産業用ロボットと労働安全

産業用ロボットと労働安全

現在、世界中で何台くらいの産業用ロボットが稼働していると思いますか? 国際ロボット連盟(International Federation of Robotics)の推計によると、2019年時点で全世界で約272万台(日本だけでも約30万台以上)もの産業用ロボットが稼働しており、今後も年率10%以上の伸びが予想されています。特に、中国、日本、米国、韓国そしてドイツでの伸び率が高く、この5か国だけで全世界における産業用ロボットの新規導入台数の73%を占めているそうです。また、産業部門別に見ると、ロボットの導入が多いのは、自動車産業、電気・電子産業、金属・機械産業、プラスチック・化学産業となっています。

こうした普及を背景に、産業用ロボットが関与する事故の件数も増加していると考えられています。厚生労働省の労働災害統計によると、4日以上の休業を伴った労働災害による死傷者数はここ数年年間約13万人で推移しており、1日あたり約350人が労働災害によって死亡または負傷している計算になります。

この数値は労働災害全般のものであり、産業用ロボットが関与しているものに限ったものではありません。産業用ロボットに限った労働災害の状況について言えば、たとえば芳司ら(2012)は「平成12年から21年の10年間の死亡災害について、厚生労働省の使用に基づいて分析すると、10年間に産業用ロボットにより23人が死亡している。これは同時期のプレス機械による死亡者(21人)よりも多いなど、産業用ロボットに関して包括指針〔=機械の包括的な安全基準に関する指針〕の「適正なリスクの低減」が達成されているとは言い切れない状況にある」と評価しています(〔 〕内は引用者による)。実際、厚生労働省が公表している「職場のあんぜんサイト」の労働災害事例では、「産業用ロボットの可動範囲内に立ち入り、マニプレータに挟まれる」「溶接用ロボットの教示等の作業中に挟まれる」など、産業用ロボットが関与した労働災害の事例がいくつか紹介されています。

産業用ロボットを含めて、機械安全全般に関連した日本の主な法律等としては、労働安全衛生法(労働安全衛生法施行令および労働安全衛生規則を含む)、機械の包括的な安全基準に関する指針(基発第0731001号)、機械譲渡者等が行う機械に関する危険性等の通知の促進に関する指針(厚生労働省告示第132号)、産業用ロボットに係る労働安全衛生規則第150条の4の施行通達の一部改正に当たっての留意事項について(基安安発1224第1号)、労働安全衛生規則の一部を改正する省令の施行等について(基発1224第2号)などが挙げられます。これらの関連規制により、機械の設計・製造者には当該機械に関するリスクアセスメントを行うこと、ISO 10218-1(JIS B 8433-1)およびISO 10218-2(JIS B 8433-2)に準拠していること、ISO 12100(JIS B 9700)をA規格とする機械安全規格に準拠した保護方策を実施すること、技術ファイルおよび適合宣言書を作成すること、人との衝突に関してISO/TS 15066(TS B 0033)に準拠していることなどが、機械譲渡・貸与者には譲渡・貸与時に使用上の情報や残留リスクの情報について譲渡・貸与を受ける者に情報提供することが、そして機械の使用者には使用上の情報や残留リスクの情報を入手すること、リスクアセスメントを行うこと、使用者側での適切な保護方策や作業管理等を実施することなどが求められています。

以上のように、国内関連規制にはISOなどの国際規格への準拠が含まれており、産業用ロボットに関連する労働安全衛生については、日本国内での今後の規制の動向だけでなく、国際レベルでの動向もあわせて注視していく必要があります。実際、2018年にはISO/TR 20218-1(Robotics – Safety design for industrial robot systems – Part 1: End-effectors)およびISO/TR 20218-2(Robotics – Safety design for industrial robot systems – Part 2: Manual load/unload stations)が発行されており、近い将来に実際の産業用ロボットが満たすべき要件として適用される可能性が高いと思われます。

今後ますます現場での導入が広まっていく産業用ロボット。その安全性に関する法的要求事項を満たすためには、日本国内の関連規制だけではなく国際規格の内容も確認する必要があり、慎重な対応が求められます。弊社では、産業用ロボットの導入に際して必要となるリスクアセスメントおよびコンプライアンス評価のサービスを提供しております。詳細につきましては、こちらからお気軽にお問い合わせください。

【参考文献等】

  • 芳司俊郎・池田博康・岡部康平・齋藤剛. 2012. 産業用ロボットによる労働災害の分析とアンケート結果に基づく規則改正の提言. 労働安全衛生研究 5(1): 3–15.
  • International Federation of Robotics. 2020. World Robotics Report 2020.
  • 厚生労働省. 2020. 職場のあんぜんサイト. http://https://anzeninfo.mhlw.go.jp(2020年10月21日確認).
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